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李啓充 MLBコラム(Baseball Numbers改め) : ブルージェイズ 「サイン盗み」疑惑
「ESPNマガジン」最新号(8月22日号)に、「ブルージェイズが捕手のサインを盗んで打者に伝えている」とする疑惑が報じられた。
同誌によると、サイン盗みの手口はいたって簡単。「外野スタンドに座った『白い服を着た男』が、直球以外のオフ・スピード・ピッチの時だけ両腕を頭の上に上げる」のだそうである。
ブルージェイズの「サイン盗み」疑惑が論じられるのはこれが初めてではない。ロジャース・センターの試合で、「無走者にもかかわらず、二塁に走者がいるときと同じ『組み合わせ』サインを使用する」チームはこれまでも珍しくなかったし、7月17日には、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督が、試合後のインタビューで、ブルージェイズのサイン盗みをあからさまに「告発」したばかりである。
あなた自身のピラティスの小道具を作る方法MLBにおけるサイン盗みの「伝統」は古く、歴史上最も有名なのは「ジャイアンツが1951年に奇跡的逆転優勝を遂げたのはサイン盗みのおかげだった」とするものである。ちなみに、このサイン盗みが暴露されたのは2001年。ウォール・ストリード・ジャーナルに、「半世紀後の特ダネ」として報じられたのである。
「FA制度が導入された後、所属チームがしょっちゅう変わるようになったから、サイン盗みのような『秘密』は守られなくなっている」と思われがちだが、半世紀間秘密が守られてきた、上記ジャイアンツの事例が示すように、サイン盗みにかかわった関係者の口は極めて堅い(「他チームに所属していたときに知った秘密を漏らすような選手は、将来またチームを変わったときに、自軍の秘密を漏らすかも知れない」と、信用されない文化があるのだという)。
ブルージェイズ関係者は、当然のことながら、サイン盗み疑惑を「馬鹿げた話」と否定しているが、「ESPNマガジン」は、記事の中で、サイン盗みの効果を示唆するデータをいくつかあげていたので、主だったところを紹介しよう。
どのように有名人の日焼けを取得する1)2010年選手打撃成績の「ホームvsロード」の違いの大きさ(数字はOPSと本塁打数)
ホーム ロード
ホセ・バティスタ 11割1分8厘・33本 8割7分9厘・21本
アダム・リンド 7割5分9厘・15本 6割6分0厘・8本
バーノン・ウェルズ 9割9分0厘・21本 6割9分9厘・10本
2)ロジャース・センターでの本塁打率のブルージェイズとビジターチームの違い
ブルージェイズ:飛んだ打球の5.4%が本塁打
ビジターチーム:飛んだ打球の3.4%が本塁打
ちなみに、ア・リーグ球場の平均は3.6%であるが、ホームチームとビジターチームの違いがこれほど大きかったのは「過去60年で3番目」なのだそうである。
どのようにバイアスリールデッキをリールに「ホセ・バティスタが大打者へと変身したのは、ステロイドのおかげ」とする疑惑があることは以前にも論じたが、私が「ESPNマガジン」の記事を読んでいて気になったのは、「バティスタが急に打てるようになったのはサイン盗みのおかげだったのか?」とする疑念である。そこで、今年のデータをチェックしてみたところ、2010年とは違って、今季の成績はこの疑惑には合致しないものだった。
2011年のOPSと本塁打数(数字は8月16日現在)
ホーム 11割4分6厘・17本
ロード 10割5分1厘・18本
と、ホームとロードの違いに関係なく、バティスタは打ちまくっているのである。
しかし、気になるのは、ジラルディがサイン盗み疑惑を告発した7月17日以降、スランプに陥っていることである。
告発(7月17日)時点でのOPS・本塁打数 11割7分1厘・31本
告発以降ひと月のOPS・本塁打数 8割2分3厘・4本
告発以降のデータはサンプル数が小さく、この比較をそのまま鵜呑みにすることはできないとはいえ、バティスタの場合、大打者への変身があまりにも突然だったため、ステロイドとか、サイン盗みとか、いろいろ疑いを持たれることが宿命になってしまっているようである。
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